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第1部 一章【財前姉妹】その8 第六話 先手必勝は誤り

Author: 彼方
last update Last Updated: 2025-05-19 22:00:00

96.

第六話 先手必勝は誤り

 今日もアンは麻雀部に来ている。今日は珍しくアンとユウの2人だけだ。

「今日は2人だけだしたまには将棋でも指そうか?」

「いいですね、気分転換になりますし」

 ユウはスグルの勉強机の下にある将棋盤と駒を引っ張り出した。

「私、あまり強くないから先手ちょうだい」とユウがハンデを要求してきた、それはそうだ。なにせアンはプロ棋士のいとこなのだから。

「いいですよ。でも※平手(ひらて)でいいですよね?」

「それは大丈夫。あんまりにも勝てないと思ったら駒のハンデもらうね」

「分かりました」

パチ

パチ

パチ

パチ

パチ

パチ

 将棋を指しながらアンはユウに先日思いついたインスタントコーヒーの美味しい淹れ方を説明した。

「……てことでね。私はインスタントコーヒーでも美味しく飲めるコツを掴んだわけですよ」

パチ

「へぇ、やっぱり手間をかけた方がいいものが出来るのは麻雀でもなんでも一緒ね」

パチ

「中には最速最強とか言う人もいるけど、そんなわけはないですからね」

パチ

「あれは本気では言ってないでしょ。キャッチーなタイトルで売り出したいっていう出版社の戦略なだけよね。まあ、最速最楽ではあるけど、楽な提案は人気になるのも頷ける

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    93.第三話 間違った空切り その日、カオリはプロの動画を見て勉強していた。それを一緒にwomanも見る。二三四78889白白(③チー④⑤) ドラ伍 その動画ではプロはこの手を③リャンメンチーしていた。《……何を焦っているんでしょうか》(わからないけど、とりあえず私の麻雀とは違うわね) ここになんと4枚目の8を引いてくる。それをプレイヤーは空切り※した。(カンでもした方がマシなんじゃないの?)《いえ、これは8索切りです。しかし、空切りはいただけませんね。8索はツモ切りの一手でした》(そうなの? 私、ちょっとどんな時に空切りだと良くてツモ切りだとダメとかまだ難しくて分からないんだけど)《そう言う時はイメージするんです。どんなストーリーならアガリを取れそうか》(ストーリー?)《そうです。必ず相手目線になって考えて。例えばコレならアガるためには白があと1枚必ず必要なわけですから、それを相手が持っていると仮定してツモ切りと空切りのどちらだと鳴けるだろうか? って考えてみましょう》(えっとー、空切りってのは相手から見たら手出しなわけだから要するに手が進んだように見えるわね。比べてツモ切りは前進していないのだからツモ切りの方が白を切りやすいわ)《そう言うことです。空切りは”それ以前の安全牌が安全ではなくなるという良さ”は確かにありますが、この場合はまず大前提として役牌が打たれやすい場にしないといけませんので可能な限りツモ切りをしましょう。こういう役牌が鳴けないとどうにもならない場合は安牌をクルクル交換したりするのも厳禁です。目的の役牌を鳴けるまでは全然手が進んでいないことをアピールしていきましょう》(なるほどねー。ちょっとわかったわ。麻雀って複雑ね)《だから面白いんですよ》

  • 【牌神話】〜麻雀少女激闘戦記〜   第1部 一章【財前姉妹】その8 第二話 ノモノモの国士無双

    92.第二話 ノモノモの国士無双 一方、麻雀部はというとカオリ、マナミ、ミサトがプロになっただけでも誇らしかったのにミサトは新人王。ユウはプロを押しのけてのUUC杯優勝という快挙を成し遂げていて麻雀部部室(スグルの部屋)には2つの優勝カップが飾られた。「スゴイわ~。先輩たち」と野本ナツミは感動した。「ミサト先輩なんか全然放銃しないのに攻撃力も備えていて本当に強いのよ」とヤチヨが言う。「部長も強いですよね。勘がいいというか。誰にも真似出来ない強さです」 優勝2つの横にマナミの新人王戦3位の盾も輝いていた。3位だってたいしたものである。「さて、今日はみんなで野本さんに『雀ソウル』の3人打ちを教わろうということで、野本さんの麻雀をモニターに映してみんなで質問していきましょう」 ……とは言え、みんなそれほど下手なわけではないので野本ナツミが教える程のことはもうあまり無かった。この局を除いては。三人半荘戦東1局は親(CPU)が南家(CPU)から3900を取り、続く東1局一本場は西家(ノモノモ)が8000は8200を親から出和了る。そして迎えた東2局4巡目ノモノモ手牌九①⑨129東南南西北白発 中ツモ「はいテンパイしました。ここで問題です。この手はリーチしますか?」「リーチで牽制しておいたほうがいい気がするなあ。足止めしてアガリを拾う! 私はリーチで」とヤチヨ。「私もリーチかな。無視されたくないし」とヒロコ。「一萬は1枚切れだしツモれそうよね長引かせたいし私もリーチで」とユウも同じ意見だった。「カオリ先輩はどうですか?」とナツミが聞いてみた。「えっ、私。私

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    91.ここまでのあらすじ 麻雀部には今年も新1年生が加入。1年生、野本ナツミは三人麻雀に長けていた。今まで研究していなかった三人麻雀の戦術を野本から学んでいき麻雀部はさらに強くなっていく。 一方、新人プロたちは新人王決定戦に参加。激戦の末に井川ミサトが新人王のタイトルを獲る!【登場人物紹介】財前香織ざいぜんかおり通称カオリ主人公。女子大生プロ雀士。読書家で書くのも好き。クールな雰囲気とは裏腹に内面は熱く燃える。柔軟な思考を持ち不思議なことにも動じない器の大きな少女。その右手には神の力を宿す。財前真実ざいぜんまなみ通称マナミ主人公の義理の姉。麻雀部部長。攻撃主体の麻雀をする感覚派。ラーメンが大好き。妹と一緒に女子大生プロ雀士となる。ラシャの神に見守られている。佐藤優さとうゆう通称ユウ兄の影響で麻雀にハマったお兄ちゃんっ子。誘導するような罠作りに長けている。麻雀教室の講師になることが夢。竹田杏奈たけだあんな通称アンテーブルゲーム研究部に所属している香織の学校の後輩。プロ棋士のいとこ。佐藤卓さとうすぐる通称スグル佐藤優の兄。『富士』という雀荘の遅番メンバー。萬屋の右腕的存在。自分の部屋は麻雀部に乗っ取られているが全く気にしていない。井川美沙都いがわみさと通称ミサト麻雀部いちのスタミナを誇る守備派の女子大生プロ雀士。怠けることを嫌い、ストイックに生きる。中條八千代なかじょうやちよ通称ヤチヨテーブルゲーム研究部所属の穏やかな少女理解力が高く定石を打つならコレという判断を間違えない。三尾谷寛子みおたにひろこ通称ヒロコテーブルゲーム研究部所属の戦略家ゲームの本質を見抜く力に長けていて作戦勝ちを狙う軍師。倉住祥子くらずみしょうこ通称ショウコ竹田アンナの同級生。ややポッチャリ気味の美少女。見た目通り、よく食べる。学力は高く常に学年上位だがそんなことには全く興味がない。天才肌。浅野間聡子あさのまさとこ通称サトコショウコの親友。背が高くてガッチリした体格。中学時代はバレー部で活躍したが高校からは料理研究部に興味を持ち運動部はやめることに。運動神経よりも戦略や読みで活躍する頭脳明晰な元セッター。womanカオリにだけ届く伍萬の付喪神の声。いつも出現するわけではなく、伍に触れた時

  • 【牌神話】〜麻雀少女激闘戦記〜   第1部 一章【財前姉妹】その7 第十四話 新人王決定!

    90.第十四話 新人王決定! 本戦でも2人は変わらず順調に勝ち進んだ。 マナミは持ち前の攻撃力でどの距離からも攻め続けて圧倒し、ミサトは得意の守備で失点を最小限に抑えて親番のみ一気呵成(いっきかせい)に攻めて勝ち抜いた。「2人とも上手いなあ」《そうですね。それに牌の巡り合わせもいいですね。2人とも決勝に行くんじゃないですか》 womanの予想は的中した。決勝卓進出者諏訪翔太(すわしょうた)プロ5年目河村弘(かわむらひろし)プロ2年目財前真実(ざいぜんまなみ)プロ1年目井川美沙都(いがわみさと)プロ1年目(未来予知まで出来るの?)《たまたまですよ》 天下分け目となったのは接戦のまま迎えた最終戦南2局。上家のもう親番のないトータルラス目の諏訪から6巡目に先制リーチが入った局だった。「リーチ!」諏訪手牌①②③12345679白白 この手、リャンメンを拒否して作ったこの一気通貫をアガることが出来れば優勝条件が現実的な点差となる位置で次局を迎えられる大切な局面。諏訪はプロ入り5年目だ。今回が新人王戦へ参加出来るラストチャンス。その想いがこの手牌に込められていた。(なんとしても。なんとしても!)そんな願いがリーチ宣言牌の6索から聞こえるようだった。 一方、ミサトは親でイーシャンテン。ミサト手牌三三伍六七②③④⑥⑦⑦247巡目ここにツモ5と引いた。ドラは七

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